前  周生期学部 研究テーマ(その5) 次


新生児脳損傷治療に有効な新規糖質製剤の開発

  • 中西 圭子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
  • 松井ふみ子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、研究企画調整科)
  • 時田 義人(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
  • 大平 敦彦(愛知医科大学、先端医学・医療研究拠点)

 新生児医療が発達した現在でも、出生時仮死による低酸素負荷や脳内出血など、出生前後の時期(周生期または周産期と呼びます)に特有な病因による脳障害は、残念ながら減ったとは言えません。したがって、周生期の脳損傷を有効に抑制することは、現代の周生期医学に課せられた重要課題となっています。
一般に、脳損傷を治療するためには、次の3つが考えられます。(1) 損傷に伴う神経細胞死を抑制する。(2) 変性脱落した神経細胞を補充する。(3) 生き残ったまたは補充された神経細胞に、効率よく機能的な神経回路を再構築させる。私達は、分化途上の脳の細胞表面に豊富に存在するプロテオグリカンと呼ばれる一群の高分子量糖蛋白質が、神経保護、神経幹細胞の機能制御、軸索伸長などに関与しうることを明らかにしてきました。そこで、これらプロテオグリカンの生理活性を利用することにより、有効な脳損傷治療法を開発しようと考えました。
これまでに、プロテオグリカンの硫酸化多糖側鎖であるコンドロイチン硫酸のうち、高度に硫酸化されたコンドロイチン硫酸(CS-E)が、強い細胞増殖促進活性を持つことや、興奮性神経細胞死を抑制する活性をもつことを見つけています。今後はこれらの活性の機構を明らかにし、脳損傷治療に応用していくことを目指しています。

関連論文
  1. Matsui, F. et al. (2005) Changes in the amounts of chondroitin sulfate proteoglycans in rat brain after neonatal hypoxia-ischemia.
    J Neurosci Res, 81: 837-845

  2. Ida, M. et al. (2006) Identification and functions of chondroitin sulfate in the milieu of neural stem cells
    .J Biol Chem, 281: 5982-5991

  3. Sato, Y. et al. (2008) : A highly sulfated chondroitin sulfate preparation, CS-E, prevents excitatory amino acid-induced neuronal cell death. J Neurochem, 104: 1565-1576.