発達障害研究所
Institute for Developmental Research
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2008年度 発達障害研究所 共同セミナー


日時 平成20年 9月 2日(火) 16:30−17:30

場所

発達障害研究所 1階共同セミナー室

演題 活性酸素によるゲノム障害とその防御機構−発がんと神経変性の分子病態−
講師 中別府雄作 教授 九州大学生体防御医学研究所・個体機能制御学部門・脳機能制御学分野
講演要旨  生物にとって、その遺伝情報を担うゲノムDNAを細胞から細胞へ、親から子へと正確に伝え維持することは最も基本的な生物学的機能であるが、ゲノムDNAやその前駆体であるヌクレオチドは、酸素呼吸の過程で必然的に発生する活性酸素(スーパ ーオキシド、過酸化水素、水酸基ラジカル、一酸化窒素など)や生体防御のために生体が能動的に産生する活性酸素によって酸化される危険に常に曝されている。活性酸素に曝されたDNAやヌクレオチドは様々な酸化的化学修飾を受けるが、このような酸化損傷は修復、除去されないと突然変異を引き起こすことで細胞のがん化の原因となり、あるいは細胞死を引き起こすことで多くの変性疾患などの原因となり、老化を促進すると考えられる。
 我々は、「核酸の酸化損傷の防御機構」の研究からMTH1、 OGG1、MUTYHの3つの酵素が活性酸素によるDNAやヌクレオチドの酸化で最も高頻度に生じる酸化塩基「8−オキソグアニン」(8- oxoG)と「2-ヒドロキシアデニン」2-OH-A)の排除と修復に不可欠であることを明らかにし、それぞれの遺伝子欠損マウスや家族性大腸腺腫症患者の解析から8-oxoGと2-OH-Aが「自然突然変異・自然発がん」の原因となることを証明した。
 さらに、MTH1、OGG1、MUTYH欠損マウス由来細胞を用いた解析から、8-oxoGや2-OH-Aがヌクレオチドプール、核ゲノムあるいはミトコンドリアゲノムへ蓄積すると2つの異なる 「細胞死の経路」が誘導されることを見出し、MTH1やOGG1欠損マウスを用いた神経変性疾患モデルの解析から神経細胞のミトコン ドリアゲノムへの酸化塩基の蓄積が神経変性の原因となる事を明らかにした。一方、パーキンソン病やアルツハイマー病患者の剖検脳の解析から、これら患者の変性部位には8-oxoGが高度に蓄積するだけでなく、MTH1、OGG1そしてMUTYHの発現が大きく変動することを見出し、核酸の酸化損傷の防御機構の破綻がヒト脳の変性疾患の発症に関わる可能性を示した。
フッタ