発達障害研究所
Institute for Developmental Research
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2009年度 発達障害研究所 共同セミナー


日時 平成21年7月27日(月) 16:00−17:00

場所

発達障害研究所 1階共同セミナー室

演題 Reelin−Dab1関連分子STK25によるゴルジ体形態形成および神経極性制御:
講師 松木 亨博士
SUNY Upstate医科大学、神経科学・生理学部門

講演要旨  細胞極性は、細胞の形態変化や細胞移動など生体が様々な機能を持つために必要とされる形態形成にとって非常に重要な細胞の機能である。例えば神経細胞は、細胞極性が認められる細胞の一つであり、神経突起の軸索、樹状突起への分化には細胞極性(神経極性)の獲得と維持が必須である。現在までに、Reelin−Dab1シグナルの不活性化が、樹状突起形成不全、Tauの過剰リン酸化などを誘導する事が判っている。Tauのリン酸化は、アルツハイマー病を初め多くの神経変性疾患で見られる病態の一つであるが、神経細胞の発達時期では、軸索形成に関与している。したがって、Tau過剰リン酸化におけるReelin-Dab1シグナル関連分子の同定、及び機構の解明は、神経変性疾患の誘導機序、および、軸索形成を含む神経極性制御機構を理解するために重要である。
 本研究で我々は、Tau過剰リン酸化状態の異なる2系統(strain)のDab1変異マウスの海馬を用いてマイクロアレイ解析を行い、STK25を同定した。STK25はSte20-likeキナーゼファミリーに属するセリンスレオニンキナーゼである。このファミリーには多くの種で保存される細胞極性関連分子が属している事や、これまでの知見から、病態時でのTau過剰リン酸化だけでなく、神経極性制御及び軸索形成に関与する可能性が示唆された。そこで、STK25のTauのリン酸化及び神経極性への影響を調べるため、STK25の機構解析を行うことにした。まず、海馬神経細胞でshRNAによりSTK25の発現を抑制した結果、Tauのリン酸化の抑制および軸索形成の阻害、さらにゴルジ体の断片化が生じる事が判った。一方、STK25の過剰発現によって、神経細胞で複数の軸索が形成されると共に、ゴルジ体を萎縮させている事が判った。興味深いことに、Reelin-Dab1シグナルは、STK25の過剰発現が誘導するゴルジ体の形態変化を抑制することが判った。なお、ゴルジ体の断片化誘導により軸索形成が阻害されることなどから、ゴルジ体の細胞内位置や形態が神経極性制御に関与する可能性が示唆されている。
 以上の結果は、Reelin-Dab1シグナル機構の解明と共に、STK25が関与する神経極性制御機構の解明に貢献すると考えられる。現在、STK25とともにSTK25の結合分子である、ゴルジ体関連蛋白質GM130に着目して、神経極性制御機構を解析している。STK25が関与するシグナル機構を明らかにする事により、Reelin-Dab1シグナルの関与する神経極性制御に対する理解が深まる事が期待される。
フッタ