日本版知的障害者用認知症尺度の作成
- 研究代表:長谷川桜子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、教育福祉学部)
医療技術や福祉の向上などによって、知的障害のある人たちの寿命も伸長し、中高齢の人たちが増加してきた。その結果、認知症を発症する人も増加しつつある。もともと知的な障害がある人にとっても、認知症によって今までとは違う知的機能の障害をもつことは、それまでの安定した生活に混乱や不安をもたらしがちである。また認知症は命にもかかわりうる。したがって、早期からの適切な医学的・福祉的対応が重要である。しかし、知的障害のある人たちには、言語理解や言語表出が苦手な人も多く、一般的な記憶の検査などが行えないことも多い。また、発症前の知的能力や社会性の程度が人によってかなり違うので、本人を長い間知っている人からの詳しい情報がないと、若いときからの状態・行動と、認知症によってあらわれた症状を見極めるのが難しい。このように、知的障害のある人の認知症を早期に発見することは容易でなく、速やかな対応がなされにくいのが現状である。この問題に対応するために、他の先進国ではすでに、知的障害のある人のための尺度がいくつか作成されているが、日本には未だ、利用可能なものがない。そこで、現在、知的障害のある人の認知症の早期発見に役立つ、わが国で利用可能な尺度の作成に取り組んでいる。
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