発生障害学部 研究テーマ(その6)
環境への馴化に障害のあるラットの研究
- 松田素子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、発生障害学部)
胎生期の脳発達は甲状腺ホルモン不足により非可逆的な影響を受ける。その甲状腺ホルモン作用を介して、環境ホルモンは胎生期の脳発達に影響を及ぼすと考えられている。本研究の目的は、胎生期脳発達障害の防止を目指し、甲状腺ホルモンが機能する“依存期”を検索しその時期の脳発達を解析することである。現在までに、オープンフィールドでの探索行動量の減衰“馴化”を指標に、胎生13.5日がラット胎仔脳発生における甲状腺ホルモン依存期であることを明らかにした。それら馴化不全ラットでは、前脳と後脳のNT-4(神経栄養因子)量が増加しており、オレキシン神経(視床下部に局在し、探索行動に関わる)の動態に変化が見られた。ラット胎生13.5日前後は、延髄、橋、中脳、視床、視床下部等の神経(核)の最終分裂の時期である。NT-4は主に知覚神経、脳神経、自律神経、延髄、橋に存在し、その量はラット胎生13.5日にピークに達し、以後は減少する。母体の甲状腺ホルモン濃度が低下し、NT-4量が増加することにより、脳幹、視床、視床下部等の神経発生が異常になり、探索行動の馴化不全が引き起こされる可能性が考えられる。今後は、オレキシン神経に投射している縫線核の動態を馴化不全ラットで調べ、出生後の馴化不全に関わる胎生期脳発達の機構解析をさらに進めて行く予定である。 |
関連論文
- Katoh-Semba R., Ichisaka S., Hata Y., Tsumoto T., Eguchi
K., Miyazaki N., Matsuda M., Takeuchi I. K., and Kato K.
NT-4 protein is localized in neural cells in the brain
stem as well as the dorsal root ganglion of embryonic and
adult rats. J. Neurochem. 86:660-668, (2003).
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