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障害者の身体活動と体力に関する研究
 −障害者の全身持久力向上のための身体活動−

 里中綾子、鈴木伸治、河村守雄1

 有酸素運動能はわれわれの生活の資質の向上や疾病の予防に重要であると考えられている。ACSM(American College of Sport Medicine)ガイドラインではできれば毎日中等度の強度以上の運動を30分以上実施することが推奨されている。しかし、合衆国における調査ではこの基準を満たす健常者は人口のわずか5にすぎなかった。実際に社会参加している障害者でもACSMのガイドラインの基準を満たしている割合はかなり低いと予想される。すなわち、相当多くの障害者は低身体活動であり、低身体活動から続発する低体力であると推察される。21年度まで、運動生理学の領域における常識と反し、脳性麻痺非アスリート成人では、エアロビックフィットネスが日常身体活動の強度や時間とは相関がなく、日常生活における連続心拍数の頻度分布図における歪み度と相関し(r= -0.56, n=18)、有酸素運動に至らない短時間の身体活動の蓄積がエアロビックフィットネスを向上させることを明らかにし、この知見は20114Gazz Med Italに掲載された。さらに脳卒中やその他のインペアメントを含む被験者を加え、この歪み度に性、年齢などを説明変量として加え重回帰分析を行った結果、やはり歪み度は性や年齢とともに有意であることを明らかにした。23年度はこれら一連の研究の下支えとなる最大下運動の脳性麻痺者に対して実施する妥当性を初めて明らかにし20123Archives of Physical Medicine and Rehabilitationに掲載された。障害者に対するエアロビックフィットネス向上を企図した運動療法の際に、従来自覚的運動強度を用いることは広く受け入れられてきたことであるが、われわれはこれに警鐘を与えた(The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness; 201210)24年度以降は、この研究をさらに発展させ、軽度〜重度にいたる障害がある人のNEAT、すなわちnon-exercise activities thermogenesisが有酸素運動能に及ぼす影響について詳しく調査している。


名古屋大学医学部大学院