前  機能発達学部 研究テーマ(その3) 次


発達に遅れがある児のコミュニケーション能力の発達

  • 中村みほ(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、機能発達学部)

 言語発達においては、もっぱら音声言語、特にその表出の有無に関心が向けられがちである。しかしながら、表出言語の出る以前の前言語段階の発達が重要であり、象徴機能をはじめとする知的発達、さまざまな身体機能の発達はもとより、コミュニケーション意欲などの社会性の発達が前言語段階に求められている。われわれは前言語段階におけるコミュニケーション能力の評価のひとつとして、社会性の発達に着目したearly social communication scales (ESCS) の使用を試み、健常児、ならびに発達障害を持つ児に対して言語表出との比較を行っている。
 これまでに得られた結果の一部を紹介する。始語開始直後の2,3語の表出言語を持つ健常乳幼児においてはESCSにおけるレベル3の段階をクリアしていることが確認でき、従来の報告と一致した。また、表出言語をもつ3名のウィリアムズ症候群幼児においてもレベル3の発達を認め、うち1名においては細項目のjoint attentionの発達に伴い言語表出が発現する過程が確認された。
ESCSによる評価は発達障害児においても臨床症状をより客観的具体的に表すことができ、有用と考えている。