筋音図を用いた身体を傷つけない筋機能評価法の開発
−障害のある人の廃用性筋機能低下の予防に向けて−
- 伊東保志 (愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、機能発達学部)
日常生活における歩く・走るといった動作をはじめ,すべての身体活動は筋が発生する力を駆動力とし,関節を動かすことによって実現されている.筋は多数の細長い細胞,いわゆる筋線維によって構成されており,筋が発揮する力(筋力)はこれら多数の筋線維が収縮することによって発生する張力を腱で統合した結果である.すなわち,筋力の大きさは,収縮する筋線維の活動様式(収縮する筋線維のタイプや数,各筋線維が収縮する頻度)によって様々に変化する.ところで,心身に障害を持つヒトの筋機能は,筋自体に障害がある場合はもちろん,そうでない場合でも身体活動量が低下しがちであり,そのため廃用性の筋機能低下を引き起こす可能性が高い.つまり,障害者の筋機能を計測することは,障害の程度を知るだけでなく,日常の身体活動量の低下による廃用性の筋機能低下を予防することにもつながると考える.本研究の目的は,筋音図といわれる収縮する筋線維の振動に起因し,体表面の微細な振動現象として記録される信号を用い,身体を傷つけることなく筋線維の活動様式を評価する方法を提案し,その信頼性・有用性を明らかにすることである. |