モワット-ウィルソン症候群の原因遺伝子SIP1の発現解析
- 西崎 有利子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
- 高木 豪 (愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
- 松井ふみ子 (愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、研究企画調整科)
- 東 雄二郎 (愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
モワット-ウィルソン症候群は、1992年に愛知県心身障害者コロニー中央病院の医師らにより、初めて報告されました。そしてその後、当コロニーの発達障害研究所遺伝学部で研究が進められ、これらの症状は、zfhx1ファミリーの一つであるSIP1 (Smad Interacting Protein 1) (ZEB2)とよばれる遺伝子の異常によって起こることが、2001年に初めて明らかにされました。
私たちの研究室では、モワットウィルソン症候群の症状がなぜ起こるのか解明することや、この病気の治療法などの開発を目指して、SIP1遺伝子に注目して研究を行っています。現在、SIP1遺伝子がいつどこでどのように働いているかを調べるために、SIP1遺伝子の発現する場所で緑色蛍光タンパクを発現するようなマウス(SIP1-GFP)を作成し、SIP1遺伝子が働いている場所や、作用の機構を調べようとしています。このマウスを用いて抗GFP抗体による免疫組織化学染色を行ったところ、GFPによってモニターされるSIP1の発現は、新生仔の海馬、大脳皮質において核内に観察されました。海馬や大脳皮質は記憶や学習などの脳の高次機能を担っている部位として知られており、モワット-ウィルソン症候群の全ての患者さんに見られる重度知的障害との関連性を示唆していると思われます。このような研究から、モワットウィルソン症候群の病態解明や、ひいては治療に役立つ知見が得られることを期待しています。
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