遺伝学部 研究テーマ(その4)
精神運動発達遅滞例の原因遺伝子の研究
- 若松延昭(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、遺伝学部)
- 山田裕一(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、遺伝学部)
- 山田憲一郎(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、遺伝学部)
- 石原尚子(厚生連加茂病院)
- 野村紀子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、研究企画調整科)
- 長屋昌宏(愛知県心身障害者コロニー総長)
精神運動発達遅滞と眼間開離などの特異的な顔貌に、ヒルシュスプルング病、てんかん、小頭症、心奇形などを併発し、常染色体優性遺伝形式を呈するMowat-Wilson症候群は、SIP1
(Smad interacting protein 1) をコードする遺伝子ZFHX1Bの異常により発症することを、世界ではじめて明らかにした。現在までに、多くの症例の遺伝子解析を行い、31症例の一方の染色体上のZFHX1Bに変異
(ナンセンス変異やフレームシフト変異)を同定した。また11例にはZFHX1Bの一部または全域にわたる染色体の小欠失を認めている。この結果は、胎生期のZFHX1Bの発現量が半減することにより、症状が出現することを示している。一方ZFHX1Bは転写調節に関わる遺伝子であるが、本症の病態を解明する目的で、特異siRNAを用いてZFHX1Bをノックダウンした培養神経細胞や、脳特異的ホモ欠失変異マウスを用いて、SIP1
(Sip1) が著減したあるいは欠損した状態での培養細胞やマウス脳細胞における遺伝子および蛋白質の解析を行っている。ZFHX1Bの発現量の低下が神経細胞の生存に多大な影響を及ぼすことが明らかになり、今後、これらの細胞で発現の変動する遺伝子および蛋白質の解析が不可欠となっている。
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encoding Smad-Interacting protein 1, cause a complex developmental disorder
with a great variety of clinical features. Am J Hum Genet 69: 1178-1185,
2001.
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