遺伝学部 研究テーマ(その7)
レット症候群の原因遺伝子変異解析
- 山田裕一(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、遺伝学部)
- 三浦清邦(愛知県心身障害者コロニー中央病院)
- 野村紀子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、研究企画調整科)
- 孫田信一(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、遺伝学部)
- 若松延昭(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、遺伝学部)
レット症候群 (RTT) は、手もみなどの手の常同運動、自閉傾向、知的障害を主症状とする進行性の神経疾患で、女児の約10,000人に1人の頻度で発症する。伴性優性遺伝で、原因遺伝子はX染色体長腕
(Xq28) にマップされているメチル化CpG-結合タンパク質2をコードする遺伝子MECP2である。コロニー中央病院および県内外施設からの依頼に応じてMECP2の遺伝子解析を行っており、全分析症例数は100例を数えた。これまでにバリアントも含めRTTと臨床的に診断される症例で55例に変異を確認したが、疑似例や男児例では変異を見い出していない。RTTの原因遺伝子変異は分析でよく見つかる10種程のコモン変異が70%をしめるが、残りの30%は症例で個々に異なり、確定診断には塩基配列の検索が不可欠である。MECP2はDNAのメチル化部位に結合して遺伝子の転写調節を行っているが、遺伝子変異と臨床症状の関連は、疾患の予後とも関連して興味深い。ある種の変異では、歩行の可否や言語発達に関して一定の傾向が論じられているが、未だ結論には至っていない。本研究においても、コロニー中央病院の変異解析例を中心に臨床症状と照合して考察を試みているが、これらの相関を明らかにするには今後のさらなるデータの蓄積が必要と考えられる。
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関連論文
- Yamada Y, Miura K, Wakamatsu N, et al: Molecular analysis of Japanese patients
with Rett syndrome: Identifi-cation of five novel mutations and genotype-phenotype
correlation. Hum Mutat (Online#443) 18: 253, 2001.
- 三浦清邦,熊谷俊幸,鈴木淑子,大木隆史,松本昭子,宮崎修次,早川知恵美,孫田信一,山田裕一,若松延昭:MECP2遺伝子異常を伴うRett症候群の臨床症状について.脳と発達
37: 39-45, 2005.
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